「赤い指」/東野圭吾

中学生による幼女殺害事件の加害者家族と捜査側の話。
いろいろな問題が織り交ぜられて描かれていた。
理系人間を自負する作者らしく、計算しつくされてのことだったのだろう。

加害者側の前原家の、嫁姑問題、老人介護の問題、思春期のわがままな息子を扱いきれないところ、家庭に背を向けるサラリーマンの父親。
捜査側の松宮の加賀に対する虚勢と嫉妬。加賀の父親との確執。

ただ、なにより強く書かれていたのは、親が子を思う気持ち。
思春期の息子と前原との親子関係は壊れたものとして扱いながら、年老いた母が前原を思う気持ちや、加賀と末期がんの父との隠れたつながりを描くあたり、ひょっとしていわゆる普通の家庭を作れなかった作者の、親への、疎ましい一方で、申し訳なさや感謝の気持ちが影響しているのではないかと深読みしてしまった。
同じように普通の家庭を作れなかった者として。


以下、amazon.co.jpの紹介文

出版社 / 著者からの内容紹介
直木賞受賞後第一作。構想6年の後に書きあげられた書き下ろし長編小説、ついに登場! 身内の起こした殺人事件に直面した家族の、醜く、愚かな嘘に練馬署の名刑事、加賀恭一郎が立ち向かう。ひとつの事件を中心に描き出されるさまざまな親子像。東野圭吾にしか書き得ない、「家族」の物語。
『放課後』でのデビューから数えてちょうど60冊目にあたる記念碑的作品。

内容(「BOOK」データベースより)
少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。