ライブ講義・知的財産法・第1章
第1章「知的財産法総論」について
●2002年2月の小泉純一郎首相の施政方針演説
●日本の知的財産法制度の歴史(第6〜12頁)
1)1990年以前
日本の知財保護は、先進国の中でも弱い
明治〜1980年代:日本は、最先端の外国技術の模倣により、国内産業を発展
2)1990年代
審査遅延の問題→2年以内にファーストアクション
サービスマーク→商標法改正により、サービスマークを保護対象
特許の保護が弱い→均等論、損害賠償額を高める
新たな問題点→保護が強すぎると、本来不要なライセンス契約が締結される?
→保護の強化一辺倒が、はたして本当に産業の発展を導くのか?
●均等論(第25〜30頁)
均等論の5要件
1)本質的部分でない
2)置換可能性
3)イ号物件製造等の時点で、置換が可能であることを容易に想到できる
4)イ号物件が、出願時における公知技術と同一か容易に推考できたものではない
5)意識的除外
第4要件「仮想的クレイムの法理」(アメリカ)
第26〜27頁
この第4の要件は、イ号物件をクレイムする出願が仮になされていたとしたならば、特許要件、具体的には新規性や進歩性を満たしたかどうかを判断する要件となるので、クレイムではないけれども、クレイムであると仮装して審査することによります。これを、「仮想的クレイムの法理」といいます。
第29頁
→問題のイ号物件については、置換容易ではあったけれども、置換容易であるだけにいろいろと関連技術があり、
第29頁
→ その結果、問題の技術については、実は、そこがクレイムされても無効だと言うことがありえます。
第29〜30頁(第4要件は、抗弁か、請求原因か)
→ 本来、特許権者は、均等を主張する技術について出願しておくべきであったのだから、出願していない特許権者に非があり、また、本来予定されていない、例外的な制度なのだから、特許権者に不利なほうに解しておいてよいのではないか
●結び(第63〜64頁)
第1に、知的創作物なるものは人の行為と分かち難いものであり、ゆえに知的創作物に関する権利を認めるということは、他者の自由を制約することに他ならないから、当然に権利を設けるべきであるとはいえない
第2に、法による規制のほか、市場による規制もありうるのだから、知的創作物が未保護であるからといって、直ちに立法による保護を創設しなければならないわけではない
第3に、仮に立法するとしても、可能な限り人の自由を制限することなく、目標を達成しうるような規制のポイントを探索すべきであり、
第4に、政治的な責任を負うことのない司法は、権利の創設には謙抑的であるべきである