バイアウト/幸田真音

歪んだ過去を背負いながら主人公の美潮が突き進むところや、清々しく破滅していくところは、松本清張の小説のようだった。

アイドル篠崎あかねに語られてきた言葉もいい。

女の子は、外では苦労話なんかしちゃダメだってね。幸せそうな顔をしていてこそ、女の子なんだ。(p.127)

家族を顧みなかった父が、所属のアイドルを大切にすることに嫉妬する美潮に、共感できた。男性の無邪気さは、ときに愛おしく、ときに腹立たしい。

その父が、アイドル篠崎あかねを気にかけながらその姿に美潮を重ねて胸を痛めるところに、深いものを感じた。

企業買収を扱いながら、それをとりまく人間模様も魅力的な作品だった。